大田原中学校の日常

大田原中学校の日常

「少年の主張発表」を校内放送で披露しました!

 今日の給食時に、3年5組の薄田佳歩さんによる、少年の主張発表を放送しました。

 薄田さんは、今年9月に実施された「栃木県少年の主張発表・那須地区大会」で、見事「優秀賞」に輝きました。

 しかしながら、今大会は、新型コロナウィルス感染症の影響により、原稿のみの審査で終わってしまったため、実際に声を出して発表する場がなくなってしまいました。

 そこで、より多くの生徒たちに発表を聴いてもらおうと、給食時の校内放送による発表が企画され、発表を披露することができました。

 以下、発表内容を掲載いたしますので、ぜひご覧ください。

 * * *

   心の間合い

大田原市立大田原中学校 3年 薄田 佳歩  

 「これ以上近づけば、攻められてしまうのではないか。」

 自分と相手との距離を、間合いといいます。私がこの言葉に出会うきっかけとなったのは、小学校四年生から続けている剣道でした。剣道を始めたばかりのころ、特に難しく感じたのは、間合いの取り方です。一歩踏み込めば相手を打突することができ、一歩引けば相手とのつながりが切れてしまい、打突することはできない。一見すると、ただじっと構えているだけのように見えるかもしれません。しかし、実際には、剣先がわずかに触れ合うかどうかの距離で、互いの心の内をうかがい続けているのです。間合いを取るときの緊張感は何とも言えず、ときには不安さえ頭をよぎります。しかし、緊張や不安を隠すために、むやみやたらと間合いを詰め、ただ力任せに竹刀を振るだけでは、相手に勝つことはできません。緊張や不安に動じず、柔軟に対応することが、剣道における極意なのです。

 今、私たちは、未曾有の感染症の拡大を防ぐためにマスクを着用し、身体的な距離を保ちながら生活をしています。面と向かって話す機会が減ってしまった今だからこそ、相手との心の間合いを見極め、コミュニケーションを図ることが大切だと思います。人と人との距離を遠ざけることによって、適切な心の間合いが取れなくなってしまってはいけないのです。

 世の中では、心の間合いが取れないことによる問題も起きています。例えば、児童虐待の増加です。親が、子育てへの緊張や不安を受け入れられず、それを隠すために手を上げ、子どもに対して強い自分を見せつけようとしてしまう。このとき、親は子どもとの間合いを無視し、一方的に子どもに攻撃している状態なのです。

 私は、被害を受けた子どもたちへの心のケアだけでなく、加害者である親に対する心のケアも求められるのではないかと思います。虐待をしてしまう親たちは、子どもとの適切な間合いを掴みきれず、極端な暴力や暴言によって強いふりをしようとします。そのため、詰めすぎた間合いから一歩引き、子どもが発する心の声を柔軟に受け止められるような手助けも必要なのです。

 私は、将来、心理カウンセラーになるという夢を持っています。心の間合いを大切にしながら、訪れた人が安心して相談できるようにしたいです。相談者の中には、緊張や不安から口をつぐんでしまう人もいるかもしれません。言い換えれば、周囲の人との距離を置いてしまい、適切な心の間合いを取れなくなっている人もたくさんいるのです。

 しかし、その心を無理にこじ開けようとするのではなく、間合いを見極めつつ、心を開く手助けをするのがカウンセラーの役割です。カウンセリングを通じて、不安で固まってしまった心を徐々にほぐし、自分で心を開くための一歩を踏み出してほしい。そして、一人でも多くの人に心を開いてもらい、心の間合いを取りながら安心して人とつながりあえるようなきっかけを作りたい。私はそう思っています。

 私を含めて、誰しもが心の中に弱さを持っています。未知の状況に遭遇し、様々な困難にぶつかったとき、その弱さを隠すために強さを見せつけ合ってはならないのです。適切な間合いを取り、互いの弱さを受け入れ、認め合えるような世の中になってほしいです。そのためにも、私のカウンセリングを通じて、一人でも多くの人が安心して良好な人間関係を築けるようになってほしいと願っています。剣道のように、間合いを見極めながら、柔軟な心で様々な相手とつながり合うことこそ、今の社会には必要なのです。

 「この人となら、安心して話ができる――。」

 私はいつか、相談に訪れた人との心の間合いを縮め、こう思ってもらえるようになりたいです。